
デザイナー藤田茂樹に訊く
DDDDが目指すもの
──DDDD(ディフォー)というブランドの世界観を表すコンセプト“Dress Up Lazy”(怠惰なドレスアップ)には、どのような思いが込められているのか?
僕がこれまでのキャリアで大切にしてきたのは、確かな技術でしっかりと仕立て、クオリティの高い服をつくるということです。
DDDDではそうした服づくりのアプローチを土台としながらも、さらに自分なりの抜け感や、ラフさを表現していきたい。
着飾ることができるけれど、どこか気ままに、無邪気に楽しめるような服をイメージしています。
──2026SSコレクションのテーマを、「普遍性の中に潜む驚きや発見」とした理由について。
このテーマに基づいて、どういった服づくりを試みたのか?
自分の目に映っている世界が、すべてとは限らない。
そうしたシュルレアリスムの視点を、服づくりに生かしたいと考えました。
ルネ・マグリットが描いた数々の作品のように、思わず二度見したくなるような違和感を、なんとか服で実現できないだろうかと。
もちろん、絵画ではなく服なので、見た目の面白さだけでなく、つくりの工夫がとても重要です。
そこで、折り紙を使って、自分の手でいろいろ折ってみて、偶然生まれた形状をもとに、服の構造に置き換えてみたりもしました。
生地そのものは平面なので、折り紙でシミュレーションしやすく、思いがけないヒントも得ることができます。
とにかく実際に自分の手を動かし、トワル(仮縫いした服)の試作なども繰り返して、服としての組み立て方を模索し続けました。

2025年9月、東京タワーメディアセンターで発表されたDDDDの2026SSコレクション。
4本袖のシャツやコート、ハーフ丈とロング丈を組み合わせた4本脚のパンツなどを取り入れ、シュルレアリスムの絵画のような違和感を目指した。
──トレンチコートやシャツには袖が4本ついていたり、パンツにも脚が4本ついていたりする。
コレクションを象徴するこれらのアイテムが生まれたきっかけとは?
服というのは一般的に、トップスでもパンツでも、筒の集合体だと言えます。
パンツならば、2本の筒状の生地を合体させているということです。
そう考えると、どんな筒同士であっても、一部をうまくカットしておけば、縫い合わせることができるので、パンツの脚でもトップスの袖でも増やしていける。
僕にはどこか、目から鱗が落ちるようなデザインを目指したいという気持ちがあって、今回はこのアイデアを駆使してみたいと思いました。
──たとえば、脚が4本ついたパンツには、ハーフパンツとロングパンツを合体させたようなデザインもある。
しかも、どちらの面で穿いても、ヒップにあるべきディテールがフロントにくるために、まるで前後を逆に穿いているように見えて、意表を突かれる。

4本脚のパンツは、ハーフ丈の方にもロング丈の方にも脚を通すことができ、それぞれの違ったフォルムを楽しめる。
どちらの面にも、トラウザーズのヒップのディテールを丁寧に再現しているため、常に逆向きに穿いているように見える。
これはトラウザーズをベースとして、本来はヒップ側にあるはずのボタン付きポケットやベルトループといったパーツをしっかりつくり込んで、前後の両面にあしらっています。
遠くからではよくわからないけれど、近づいてみると何かおかしいと気づく。
それくらいの違和感を生み出すために、細部に至るまで完成度を高める必要がありました。
目指していたのは、意外性とクオリティの両立です。
また、クオリティがあることで、服にリアリティが備わるのではないでしょうか。
先ほど触れたマグリットの作品にしても、現実を越えた世界でありながら、きわめて写実的な筆致で描かれているからこそ、絶妙な違和感が生まれているように思います。
──シャツにも、背面をフロントにして着られるようなデザインが見られた。ユニークなつくりが多いが、製品化するのは困難ではなかったか?
意外かもしれませんが、製品としての服が出来上がるまでのプロセスは、かなりシンプルにしています。
というのも、必要以上に工程を増やしていじりすぎると、生地本来の美しさが失われて、クオリティが落ちやすくなるため。
布帛やニットをはじめとする生地そのものの魅力を、僕は大切にしたいので、工程数もできるだけ少なくし、余計な手を加えないように努めています。

4本袖のシャツは、余った袖を垂らしたままにしたり、巻きつけてみたりとアレンジができ、それによって思わぬドレープも生まれる。
前後を逆転させたつくりも特徴で、本来は背中側にあるはずのネックラインを前下がりに仕立てることにより、首もとに自然なカーブをつくり出した。
──服に使う生地は、どういった点を重視して選んでいるのか?
生地に関しては、服に仕立てたときに見栄えがするかどうか、という視点で検討しています。
高価な生地を使ったとしても、いい服がつくれるとは限らない。
むしろ、その服のデザインにふさわしい風合いや厚みの生地を使うことが重要です。
まずは、生地自体に確かな魅力があること。
そのうえで、生地とデザインのマッチングが鍵になる。
ときには、意外性のある生地を使うことで、面白い違和感を生み出すこともできます。
──ランウェイショーでは、ブラック、グレー、ブラウンといったベーシックなカラーで統一感を出したルックに加えて、淡く軽やかなブルー、グリーン、イエローなどが映えるルックも登場した。
アクセサリーを見ると、フジツボを模したピンズや、サンドバッグ(撮影の際に使う重し)型のバッグなど、さらに遊びが効いている。
今回の春夏コレクションには、清涼感や瑞々しさのあるカラーを取り入れたいと思いました。
風が吹くとたなびくような、薄くて軽い生地も使っているために、モノトーンでも透け感が生まれているものもあります。
アクセサリーでは、あえて美しさとは無関係なものもモチーフにしています。
千利休が魚籠(びく)を花入に見立てたように、まるで異質なものにアクセサリーとしての価値を見いだしてみようとしました。

ミントグリーンやペールイエローといった涼しげな色彩が、新鮮なアクセントとなってランウェイショーでも目を引いた。
シルバーのピンズはフジツボ、レザーバッグは撮影現場などで使うサンドバッグをモチーフにしている。
──自分がデザインした服を、こういうスタイリングで着てほしいといったイメージはあるだろうか?
まったく自由に着てほしいです。
実際に僕も好きなように服を着ていますし、自分のスタイルで楽しんでもらえればと思います。
僕はアメリカで高校に通ったのですが、当時は寮に入っていて、そこの生徒たちがとても上手にスウェットを着ていて驚きました。
午前中の授業などは、上はスウェットパーカ、下はパジャマで出席していたりして、そのルーズで狙っていない感じがすごくかっこよかった。
そうした記憶もあってか、いまだにスウェットは大好きなアイテムです。
ジャケットにスウェットパンツを合わせて、無造作に着崩すようなスタイルこそ、“Dress Up Lazy”の一例だと思います。
──ランウェイショーを行い、コレクションを発表するブランドとして、これから挑んでいきたいことは?
コートやシャツに袖が4本ついているなんて馬鹿馬鹿しい、と思われるかもしれないけれど、あくまでも遊び心のひとつ。
そうした遊び心を許容し、提案する懐の深さが、コレクションブランドにはあってよいのではないでしょうか。
僕自身はこれまでに、さまざまな人たちに服づくりを教えてもらい、いくつもの取引先のみなさんに協力していただいて、今日に至っています。
その経験や出会いを糧として、嗜好品としての服の価値を追求することに軸足を置いていきたい。
ファッションはもっと柔軟に楽しんでいいと思うし、無意味に見えるようなデザインにも価値があるはず。
そうしたことを伝えていくためには、やはり、細かなところまでクオリティを高めていくことが、とても大切だと考えています。
DDDDの服を着てもらって、その服にまつわることで会話が弾んだらうれしいですね。
服の構造にしても生地にしても、試行錯誤を繰り返して、ひたすら丁寧につくり上げていけば、必ず面白いものができると確信しているので、これからも続けていくつもりです。
INTERVIEW|SHIGEKI FUJITA(DDDD Designer)
デザイナー藤田茂樹に訊く
DDDDが目指すもの
──DDDD(ディフォー)というブランドの世界観を表すコンセプト“Dress Up Lazy”(怠惰なドレスアップ)には、どのような思いが込められているのか?
僕がこれまでのキャリアで大切にしてきたのは、確かな技術でしっかりと仕立て、クオリティの高い服をつくるということです。
DDDDではそうした服づくりのアプローチを土台としながらも、さらに自分なりの抜け感や、ラフさを表現していきたい。
着飾ることができるけれど、どこか気ままに、無邪気に楽しめるような服をイメージしています。
──2026SSコレクションのテーマを、「普遍性の中に潜む驚きや発見」とした理由について。
このテーマに基づいて、どういった服づくりを試みたのか?
自分の目に映っている世界が、すべてとは限らない。
そうしたシュルレアリスムの視点を、服づくりに生かしたいと考えました。
ルネ・マグリットが描いた数々の作品のように、思わず二度見したくなるような違和感を、なんとか服で実現できないだろうかと。
もちろん、絵画ではなく服なので、見た目の面白さだけでなく、つくりの工夫がとても重要です。
そこで、折り紙を使って、自分の手でいろいろ折ってみて、偶然生まれた形状をもとに、服の構造に置き換えてみたりもしました。
生地そのものは平面なので、折り紙でシミュレーションしやすく、思いがけないヒントも得ることができます。
とにかく実際に自分の手を動かし、トワル(仮縫いした服)の試作なども繰り返して、服としての組み立て方を模索し続けました。
2025年9月、東京タワーメディアセンターで発表されたDDDDの2026SSコレクション。
4本袖のシャツやコート、ハーフ丈とロング丈を組み合わせた4本脚のパンツなどを取り入れ、シュルレアリスムの絵画のような違和感を目指した。
──トレンチコートやシャツには袖が4本ついていたり、パンツにも脚が4本ついていたりする。
コレクションを象徴するこれらのアイテムが生まれたきっかけとは?
服というのは一般的に、トップスでもパンツでも、筒の集合体だと言えます。
パンツならば、2本の筒状の生地を合体させているということです。
そう考えると、どんな筒同士であっても、一部をうまくカットしておけば、縫い合わせることができるので、パンツの脚でもトップスの袖でも増やしていける。
僕にはどこか、目から鱗が落ちるようなデザインを目指したいという気持ちがあって、今回はこのアイデアを駆使してみたいと思いました。
──たとえば、脚が4本ついたパンツには、ハーフパンツとロングパンツを合体させたようなデザインもある。
しかも、どちらの面で穿いても、ヒップにあるべきディテールがフロントにくるために、まるで前後を逆に穿いているように見えて、意表を突かれる。
4本脚のパンツは、ハーフ丈の方にもロング丈の方にも脚を通すことができ、それぞれの違ったフォルムを楽しめる。
どちらの面にも、トラウザーズのヒップのディテールを丁寧に再現しているため、常に逆向きに穿いているように見える。
これはトラウザーズをベースとして、本来はヒップ側にあるはずのボタン付きポケットやベルトループといったパーツをしっかりつくり込んで、前後の両面にあしらっています。
遠くからではよくわからないけれど、近づいてみると何かおかしいと気づく。
それくらいの違和感を生み出すために、細部に至るまで完成度を高める必要がありました。
目指していたのは、意外性とクオリティの両立です。
また、クオリティがあることで、服にリアリティが備わるのではないでしょうか。
先ほど触れたマグリットの作品にしても、現実を越えた世界でありながら、きわめて写実的な筆致で描かれているからこそ、絶妙な違和感が生まれているように思います。
──シャツにも、背面をフロントにして着られるようなデザインが見られた。ユニークなつくりが多いが、製品化するのは困難ではなかったか?
意外かもしれませんが、製品としての服が出来上がるまでのプロセスは、かなりシンプルにしています。
というのも、必要以上に工程を増やしていじりすぎると、生地本来の美しさが失われて、クオリティが落ちやすくなるため。
布帛やニットをはじめとする生地そのものの魅力を、僕は大切にしたいので、工程数もできるだけ少なくし、余計な手を加えないように努めています。
4本袖のシャツは、余った袖を垂らしたままにしたり、巻きつけてみたりとアレンジができ、それによって思わぬドレープも生まれる。
前後を逆転させたつくりも特徴で、本来は背中側にあるはずのネックラインを前下がりに仕立てることにより、首もとに自然なカーブをつくり出した。
──服に使う生地は、どういった点を重視して選んでいるのか?
生地に関しては、服に仕立てたときに見栄えがするかどうか、という視点で検討しています。
高価な生地を使ったとしても、いい服がつくれるとは限らない。
むしろ、その服のデザインにふさわしい風合いや厚みの生地を使うことが重要です。
まずは、生地自体に確かな魅力があること。
そのうえで、生地とデザインのマッチングが鍵になる。
ときには、意外性のある生地を使うことで、面白い違和感を生み出すこともできます。
──ランウェイショーでは、ブラック、グレー、ブラウンといったベーシックなカラーで統一感を出したルックに加えて、淡く軽やかなブルー、グリーン、イエローなどが映えるルックも登場した。
アクセサリーを見ると、フジツボを模したピンズや、サンドバッグ(撮影の際に使う重し)型のバッグなど、さらに遊びが効いている。
今回の春夏コレクションには、清涼感や瑞々しさのあるカラーを取り入れたいと思いました。
風が吹くとたなびくような、薄くて軽い生地も使っているために、モノトーンでも透け感が生まれているものもあります。
アクセサリーでは、あえて美しさとは無関係なものもモチーフにしています。
千利休が魚籠(びく)を花入に見立てたように、まるで異質なものにアクセサリーとしての価値を見いだしてみようとしました。
ミントグリーンやペールイエローといった涼しげな色彩が、新鮮なアクセントとなってランウェイショーでも目を引いた。
シルバーのピンズはフジツボ、レザーバッグは撮影現場などで使うサンドバッグをモチーフにしている。
──自分がデザインした服を、こういうスタイリングで着てほしいといったイメージはあるだろうか?
まったく自由に着てほしいです。
実際に僕も好きなように服を着ていますし、自分のスタイルで楽しんでもらえればと思います。
僕はアメリカで高校に通ったのですが、当時は寮に入っていて、そこの生徒たちがとても上手にスウェットを着ていて驚きました。
午前中の授業などは、上はスウェットパーカ、下はパジャマで出席していたりして、そのルーズで狙っていない感じがすごくかっこよかった。
そうした記憶もあってか、いまだにスウェットは大好きなアイテムです。
ジャケットにスウェットパンツを合わせて、無造作に着崩すようなスタイルこそ、“Dress Up Lazy”の一例だと思います。
──ランウェイショーを行い、コレクションを発表するブランドとして、これから挑んでいきたいことは?
コートやシャツに袖が4本ついているなんて馬鹿馬鹿しい、と思われるかもしれないけれど、あくまでも遊び心のひとつ。
そうした遊び心を許容し、提案する懐の深さが、コレクションブランドにはあってよいのではないでしょうか。
僕自身はこれまでに、さまざまな人たちに服づくりを教えてもらい、いくつもの取引先のみなさんに協力していただいて、今日に至っています。
その経験や出会いを糧として、嗜好品としての服の価値を追求することに軸足を置いていきたい。
ファッションはもっと柔軟に楽しんでいいと思うし、無意味に見えるようなデザインにも価値があるはず。
そうしたことを伝えていくためには、やはり、細かなところまでクオリティを高めていくことが、とても大切だと考えています。
DDDDの服を着てもらって、その服にまつわることで会話が弾んだらうれしいですね。
服の構造にしても生地にしても、試行錯誤を繰り返して、ひたすら丁寧につくり上げていけば、必ず面白いものができると確信しているので、これからも続けていくつもりです。